■ 2008年10月4日 中日新聞掲載 ■


田村能里子さんふすま絵展覧会

               名古屋

旧木曽川(現一宮市)出身の画家田村能里子さんが
描いたふすま絵の展覧会(中日新聞社共催)が、
名古屋市中村区ジェイアール名古屋高島屋で開かれている。
十三日まで。
ふすま絵は幅六十bに及ぶ五十八枚組の大作。
京都市の寺院「宝厳院」の依頼で制作した。
観世音菩薩が三十三対に姿を変えてこの世を救済した伝承にちなみ
白い民族衣装の老若男女三十三人をアクリル絵の具で表現している。
十二月の奉納後は原則公開されないため会場は多くの来場者で
にぎわっている。

10月2日にはギャラリートークも行われました。





■ 2008年10月9日 日本経済新聞夕刊掲載 ■

Look&るっく 田村能里子展 ジェイアール名古屋タカシマヤ

 名古屋市のジェイアール名古屋タカシマヤで「田村能里子展」が開かれている。
京都嵐山の大本山天龍寺塔頭宝厳院の本堂再建のために手がけたふすま絵をはじめ、これまでに発表された
油絵なども含めた九十九点を鑑賞できる。
女性の洋画家が寺の襖絵を描くのは極めて珍しく、作者の意気込みを感じる。
 
 ふすま絵「風河燦燦 三三自在」は前兆約六十メートルで、完成までに一年半をかけた。
洋画家らしくキャンバス地にアクリル絵の具で描いた。
 「タムラレッド」と呼ばれる無数のグラデーションを持つ、赤や朱色がふすま絵の基調。
砂丘を思わせるうねり、風が吹きぬけるようにはためく白いローブ、思い思いの姿勢で様々な表情を浮かべる
老若男女。
一つの完結した世界がふすま絵に閉じ込められている。
夜を描いた場面もあり、砂丘の赤と砂にしみこむような青のコントラストが目を引く。

 油絵では作者がこれまでに見てきたアジアの世界が凝縮されている。
うつろ表情をした三人の老人が、無言で時が過ぎるのを待つ姿を描いた「長い午后」は特に印象的だ。
夫の赴任先であるインドのカルカッタで触れた古代インド美術や街並み、人々が、
作者の根幹になっていることが伝わる。

 田村能里子氏はこれまでホテルや客船などに壁画を数多く描いてきており、今回のふすま絵は五十作目の
大作にあたる。
田村氏は「自分なりの見方をしてストーリーを作るなど、作品との対話を自由に楽しんでほしい」と語る。





■ 2008年10月25日 京都新聞 ■

 アート情報

 天龍寺の塔頭宝厳院本堂の再建に伴い、同本堂の全長60メートルのふすま絵を完成させた
洋画家田村能里子=東京在住=が、来春の奉納を前に全58面を京都島屋グランドホール=京都市下京区
四条河原町=で開催中=写真。
「風河燦燦 三三自在」と名付けられたふすま絵は、自然と太陽、月、三十三体の人物が描かれ、アジアの女性を
長年書き続けてきた田村の集大成となっている。
油彩画の代表作20余点や素描も出ている。



■ 2008年10月30日 読売新聞(大阪)夕刊掲載 ■

京都・天龍寺塔頭のふすま絵完成 洋画家・田村能里子さん

空も、大地も、そこにたたずみ、寝ころぶ人々の肌も、深い赤で彩られている。
田村能里子さんが完成させた京都・天龍寺の塔頭、宝厳院のふすま絵だ。
58枚、60メートルにわたる大作のタイトルは「風河燦燦 三三自在」。
大自然の中で生きる人々をモチーフとし、夜明けからたそがれまでのときの流れを表現した。
来春の奉納を前に11月3日まで、京都島屋に展示されている。

 女性の洋画家が、禅寺のふすま絵を手がけるのは初めて。
20年前に制作した中国・西安のホテルの壁画「二都花宴図」を、宝厳院の住職が目にして依頼した。
この作品を振り出しとして「風河・・・」が50作目の“壁画”となる。
「20年を経て、第一作が新作につながるなんて、輪廻転生を思わせるわね」と自作をいとおしむように見つめる。

 伝統を大切にしながら、新しい時代を同感じさせればいいのか。
頭を悩ませた。
ふすま絵のイメージに合う「和紙に墨」ではなく、「普段、使っているキャンバスにアクリル絵の具」で、
33人の人物を描くことにした。
観音菩薩が33の姿に変化し、人を救済するという仏教の教えに基づいている。

 その33人の表情は、なんとも穏やかだ。
遠くを見据えたり、まぶたを閉じて沈思したりする姿は、無心の境地への到達もイメージさせる。
時間を忘れて制作に没頭した自信とともに、これまで、あるいはこれから出会うであろう人々を描くことで、
過去から現在、未来へと巡る「輪廻転生」を表現したのだと思えた。


■ 2008年10月31日(毎日新聞) ■

ギャラリー 名刹の襖絵 鮮やかな赤で

「田村能里子展」
壁画作家として知られる画家が、京都嵐山の名刹天龍寺の塔頭宝厳院の本堂を飾る襖絵
「風河燦燦 三三自在」を完成させた。

 伝統ある寺院だけに、花鳥風月をみやびやかに描いた作品を思い浮かべそうだ。
だが、その予想は、会場に入るとすぐ打ち破られる。

 全58面、総延長60メートルの大作。
夕焼けのように鮮やかで、見る者の全身をも染めてしまうような赤が印象的だ。
アクリル絵の具でキャンバスに描いた。
砂漠を思わせる地で人々がたたずむ。
 
 中国・西安のホテルの以来でロビーを飾る作品を描いたのは20年前。
以来、壁画旧の大作は今回が50点目である。

 1944年生まれ。
大作を仕上げた心境を「集大成というか峠の茶屋に立っている道標に差し掛かった」と話す。
一休みかと思ったもののすでに次の壁画の構想を練っている。
「誰かがやってきたことをしても意味がない。自分がこれまでにしてきたことの延長で描くしかない」。
画家が上がってゆく頂は、もっと高いところにありそうだ。




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風河燦燦燦三自在展
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