印度、陽だまりの女たち
エッセイ
陽だまりの女たち
私がインドの街角や市場の女たちを描くように
なってから、いつの間にか十五、六年が経ってしまった。
インドに住んでいた頃に描きためたデッサンなど、
今では黄ばんでしまったり、紙質の悪さでぱりぱりに
破れそうになってしまったものや油絵なども含めると、
1万枚ぐらい描き続けたことになるだろうか。
何とかの一念などという求道的な心はまったくなく、
結局は「好きなもの」を好きなように描いてきた結果に
すぎないのだが、よく飽きもせずと言う感が、
我ながらしないでもない。
今まで飽きないでこられた、というよりこんなにも
こだわりを持ち続けてきてしまったのは、
「好きなもの」を好きなように描いてはきたものの、
「もうこれでよい」と自分で思えるようなものが
まだ描けていないからでもある。
(本文より抜粋)
-インドの大地は私のアトリエ
目次
T 陽だまりの女たち
U ベンガルの雨季
V 挿絵の遊歩道
W 感性の泉を汲みに
筑摩書房発行 初エッセイ
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