FUSUMA STUDIO 便り
        2008,4月

〈 2008年4月16日〉
筆置きその後
 
筆置き(絵に最後の筆を走らせて終わりとすること。
普通はサインを入れることを意味する。)

をしてからは、絵の上で絵描きが
何かを行うことはなくなる。
4月に入ってからは、襖仕立てにする前の
原画の姿を写真家の方に
一枚一枚撮っていただいたり、
カンバスを仮枠からはずす作業をして
京都に襖を搬送する前の、
諸事をひとつひとつ確認していく。
そのひとつが「寄進状」の作成。
お寺に奉納する古式にのっとって書き上げる。
絵筆を和筆に持ち替えて慣れぬ書を。
和巻紙に「奉 寄進 大亀山 宝厳院 
     御本堂障屏画 
          風河燦燦 三三自在 五十八面」

 右の趣旨は 大亀山宝巌院 御本堂新造に際し 仏縁に因りて
 天下泰平 長命寿福 子孫繁栄を祈念し 寄進奉ります
 平成弐拾年戊子花残月 画人  田村能里子 (落款)
 表書きは「奉」 。
 寄進状は4月8日。お釈迦様の誕生日、大安吉日に認め、4月14日大安吉日に略儀ながら送状した。
 同日にすべての襖絵原画はカンバスからはずされ、箱詰めにされ、襖スタジオを出て、東名をトラックでひた走り、
 同夕刻京都の襖職指定倉庫に搬入された。
 襖が出て行ったあとのスタジオ。
 カンバスもイーゼルもない。
 何か生き物の抜け殻のように、ガランとしている。
 
 ひとつの段階を終えたとはいっても、いつもの壁画の完成の時のような、脱力感はあまりない。自分の手ではないにせよ、
 まだ襖としてお寺に収まるまでの 工程や手順が向こう1年近くつづく。
 どこかまだ弦が張られているような、緊張が残っている。でも襖スタジオからの報告はこれが終わりとなる。
 
 風河燦燦三三自在を描き終え










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