風河燦燦三三自在展
開催中掲載記事

宝厳院 ■見どころ  本堂障壁画「風河燦燦三三自在」 獅子吼の庭
圧倒的な世界観で迫る
     現代女流洋画家の傑作襖絵


寛政2年(1461年)に創建された天龍寺の塔頭、宝厳院。
嵐山を借景にした回遊式庭園「獅子吼の庭(ししくのにわ)」は、室町時代、遺明使として
2度中国に渡った策彦周良(さくげんしゅうりょう)禅師による作庭だ。
「獅子吼」とは仏が説法することを意味しており、この庭を散策すると、
鳥の鳴き声、風の音、水野流れなど自然の作用に
よって説法を聞いたのと同じように心癒されると言うことから名付けられたといわれている。
庭の中央に配された「獅子岩」をはじめとした巨石や一面を覆う苔に
嵐山の借景が重なりあい、名庭を造りだしている。
時間の許す限りゆっくりと歩いてみたい。
宝厳院は、長い間本堂が失われたままだったが、このたび再建された。
また、「京の冬の旅」キャンペーンにあわせて、
田村能里子画伯による本堂障壁画が初公開される。
『風河燦燦三三自在』と名付けられた全58面にも及ぶこの障壁画は、
「タムラレッド」と呼ばれる独特の赤を使った
大地が画面の多くを占め、さまざまな姿をした33人の人間が描かれている。
禅寺の襖絵を女流画家が手掛けるのは初めてのこと。
平成に生まれたばかりの仏教文化の傑作にいち早く出会う絶好の機会だ。





画家・田村能里子が語る

宝厳院襖絵
「風河燦燦 三三自在」


「京の冬の旅」キャンペーンにあわせて宝厳院で公開される襖絵「風河燦燦 三三自在」。
全58枚、約60mにわたる大作ですが、襖絵を描かれた画家・田村能里子さんに、
作品についてお話を伺いました。


 天龍寺の塔頭宝厳院のご住職とご縁が生まれたのは、私が制作した中国・西安のホテル
「唐華賓館」の壁画がきっかけです。
仏教伝来のため中国に滞在されていたご住職は、この作品をとても気に入られました。
月日は巡って数年前、宝厳院の本堂が再建されるにあたり、襖絵の依頼を受けたのです。
 
 禅寺の襖絵を洋画で、しかも女性が描くのは初めてのこと。
本来、壁画を制作する場合は現場で作るのですが、本堂は建て替えの最中。
場所が限られてしまうので、渋谷の仮説スタジオで約1年半、コツコツと制作し続けました。
 襖絵は全58枚。
全部あわせると60m以上ではないかしら。
タイトルは「風河燦燦三三自在」。
キャンパス地にアクリル素材は時間が経っても色が変化しないので、
末永く残すのに適しています。
 
 襖絵には33体の人や自然を描きました。
観世音菩薩が33に変化して世の中を救う、というお話をヒントにしています。
ただ、襖絵を見た方それぞれが百人百様に捉えて、
ストーリーを作っていただければと思います。
例えば、観音様に見える。
お爺ちゃんに似ていると思って物語が始まるかもしれない。
人は皆、生まれも環境も考え方も違います。
作者が「こう思って!」と押し付けるのではなく、
見た人それぞれが感じるままでいいと思うのです。
 
 壁画級の作品としては今回で50作目。
大きな節目になりました。
「自在」という言葉は、誰もがあるがままに、伸びやかに生きられれば
という気持ちから付けました。
この襖絵が安らぎや活力を与える、永遠のセラピーになってくれることを願っています。







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