Talk Express from JR 東海
第9回 壁画 「そよ風のロンド」 1999年 名古屋市・JRセントラルタワーズ
今回はニューミレニアムに名古屋の顔となった駅上タワーズ内のわが子をご紹介させていただきます。
壁画はツインタワーを結ぶコンコースのオフィス棟入り口にありますが、今月オープンする(記事掲載時)ホテル棟の入り口のそばでもあり、
このタワーに来られるすべての方々にご覧いただける好位置にあります。
私事になってしまいますが、名古屋出身で高校まで在住していましたので、名古屋駅前というと正面に大きな時計版がかかっていて
その前を路面電車が行き来している光景しか思い出せません。
それがしばらく見ないうちに(事実先年までタイに住んでいたこともあり)、天にそびえる銀色のオブジェのようなタワーに変わってしまい、
なんだか石川啄木ではありませんが文字どおり「ふるさとの友が眩しく見ゆ」というような感じでした。
成長し美しく変身した友にふさわしい、スケールの大きな伸びやかな作品を置かせていただこうと構想を練りました。
総仕上げの追い込み作業中のタワー現場にはいったのは九九年の秋も深まった頃でした。
内部があまりにも巨大なので時々仕事場に行きつけず迷子になってしまうほどでしたが、警備や現場整備の方々からも心のこもった
対応をしていただき、やはり外地と違って内懐で仕事をしている安心感から集中力を上げて密度の濃い一ヶ月が過ごせました。
モチーフは東海の豊かな自然の中で、「今生きている喜び」を私なりに女神たちのかたちに託して表現を試みました。
女神たちの思い思いのポーズが美しい調和を奏でるロンドとなり、私のふるさとの記憶でもある、潮騒が砂丘を越えて吹き抜けていく、
そんな生の律動を感じていただけたなら、と願いを込めました。
またこの石造りの空間が人工的な冷たい荒れ野になってしまわないように、その心臓部に人の手の温もりと出会ってホッとさせるような
「仕掛け」をしたつもりでおります。
「故郷に錦を飾る」というと大袈裟すぎますが「壁画を飾る」の巻、でした。
この列車にご乗車でお急ぎでない方、次の名古屋で下車されてタワー見学がてら私めの『 ロンド 』との
対話を楽しまれてはいかがでしょうか。 ♪
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第9回 壁画 そよ風のロンド