このホールを過ぎてイタリアンレストランに向かう廻廊(コリドール)進んでいただきます。
右側のコーナーに額装された2点のデッサンがあります。
いずれもコルクボードにコンテで描かれた作品です。
≪13・14≫題名は「イタリア・夏の面影(A):MEMORiES OF ITALiAN SUMMER(A)
(テラコッタの水瓶(みずがめ)の傍らに立つ2人のシチリア女性)
「イタリア・夏の面影(B):MEMORiES OF ITALiAN SUMMER(B)
(革袋を持ったシチリア女性)です。
レストランへ導かれる通路には何かイタリアの風を感じさせるアートがほしいところです。
とくに作者が数度の旅行で魅了された素朴で力強いシチリア地方の風土とひとを表現したい、と思いました。
そのために現地に飛ぶのには時間がありません。
その時ふと自分の今まで描いてきたデッサンのうちインド女性をモデルにした作品2点が
目に留まりましたした。
早速20世紀初頭のシシリア女性の風俗に関する資料を取り寄せたところ、
なんとインドのサリーにそっくりなドレープの衣装をまとい、これもインドとおなじような
水瓶や容器をもち歩いています。知人のイタリア人に聞くと、シシリアは特に南部は水道が
整備されるのが遅く、母親の時代にはこのデッサンに描かれたような水汲みの光景が
そこかしこに見られた、といいます。
彼によれば、作者の描いた女性はがっしりとした骨格といい、装い、佇まい、凛とした姿勢が
シシリア女性そのものだというのです。
そんなわけでデッサンといっても生のものではなく手を加えた想像上のデッサンということになりますが、
たまたまのイタリアとインドの相似が生んだ「素(す)のままのかたち」
も中味の濃い作品といえると思います。
額装には作者の手持ちのヨーロッパのタペストリー風の織物を自分で巻いて作ってみました。
ポンペイレッド風の肌合いがコルクボードにぴったりしている、と思います。